日本の独立リーグにキューバの選手を
キューバの野球を支援したい
筆者は2006年の第1回WBCをきっかけにキューバの野球に興味を持ち、2018年8月には念願叶って現地で試合を観戦することができた。
現地観戦では粗削りながらダイナミックなプレーが随所に見られるキューバの野球を堪能できた。また選手とのSNSを通じた交流が深まるにつれ、ますますキューバの野球に惹きつけられている。
しかしながらキューバの野球事情は決して恵まれているとはいえない。
国内トップリーグでプレーする選手ですら満足に野球道具を手に入れることができないのが現状だ。
たとえ微力でも何かキューバの野球を支援することができないものか…。
ブログを開設
アリスレイ・カスティージョ・ラロサ(以下アリスレイ)は筆者が当ブログを立ち上げるきっかけになった選手だ。
ある時「何か事業を立ち上げてキューバの野球を支援したい」とSNSで漏らしたところ「ぜひ協力させて欲しい」と申し出てくれたのがアリスレイだった。
ただ筆者のようなサラリーマンがいざ事業を立ち上げるとなるとそう簡単なものではない…。
それでも日本からの支援を期待するアリスレイからは「例の事業の話はどこまで進んだ?自分は何をすればいい?」と催促のメールが届く。
とにかく何かを始めなければと開設したのが当ブログ 野球 de Amigo というわけだ。
Arisley Castillo La Rosa(アリスレイ・カスティージョ・ラロサ)
キューバの国内リーグSerie Nacional de Béisbol(セリエ ナシオナル デ ベイスボル)のTigres de Ciego de Ávila(ティグレス デ シエゴ デ アビラ)に所属
- 1991年8月30日生まれ
- 右投げ

恒例の選手に質問をアリスレイに
野球を始めたのは何歳の時?
野球を始めたのは10歳の時。野球のユニフォームはもちろん、スポーツ用品なんかほとんど無いなかで近所の子たちと裸足で野球を始めたよ。

野球を始めたきっかけは?
キューバでは野球は国民的なスポーツ。野球はそこらじゅうでプレーされていて、いつの間にか夢中になってやっていたよ。
野球のヒーローはいますか?
MLBマイアミ・マーリンズの背番号16 José Delfín Fernández(ホセ・デルフィン・フェルナンデス) 彼はキューバ系アメリカ人の素晴らしいピッチャーでとても称賛に値すると思う。もう僕たちの世界にいないのが残念だけど…。
José Delfín Fernández(ホセ・デルフィン・フェルナンデス)元マイアミ・マーリンズ 亡命を経てMLB入り 2013年新人王 2016年には16勝をあげ、その後の活躍を期待されていたがオフのボートの事故によって24歳の若さで他界
あなたの投手としての武器は何ですか?
僕の投手としての武器を言うならば、それは試合における集中力とコントロールだと思う。それを手に入れるにはしっかりとした準備が必要なんだ。
今後の野球での目標は?
海外のリーグでプレーしたい。僕がフィールドで、そしてマウンドで出来ることを見てもらいたいと思うよ。ぜひ別のレベルでプレーしたいと思う。
もし野球選手でなかったら何をしていたと思う?
僕はコンピューターやテクノロジーが好きで勉強もしている。もし野球をしていなかったらその分野で働いていたと思うな。

では野球選手を引退したら何をしますか?
長い野球人生で全てを出し切ったら疲れ果てて休むしかないかもしれないなぁ。でもできれば家族の生活の助けになる仕事をしたいね。
最後に日本の野球ファンに何か一言お願いします。
野球を愛するすべての人々へ
僕は心から野球が好きでその気持ちを支えにここまでやってきました。これからも努力を重ねて野球を続けたいと思います。読んでくれてありがとう。
これからのアリスレイ・カスティージョ・ラロサ
海外でのプレーを目指して
現状キューバの選手がMLBのチームと契約するためには亡命するしかない。
2018年12月にキューバの選手が亡命を経ずにMLBでプレーできるとする協約が発表されたが、後にトランプ政権により無効にされた。
最近アリスレイに近況を訊ねると「今年はもうプレーしないと思う。」と言う。
メキシコのチームと契約するための計画をしているらしい。メキシコのチームと連絡はとれているが、ビザを手に入れる費用を工面するのが難航しているようだ。
以前にも家族の生活を助けるためにメキシコでプレーしたいと言っていたので、その話が具体化したということか。
キューバではインターネットの内容を政府に監視されているのだとか。それが本当なら彼とのやりとりの中で”亡命”という単語は避けたほうがよさそうだ。
そのため詳細を訊けずにいるのだが…。
メキシコの野球
現在メキシコには夏シーズン、冬シーズン、様々な野球リーグが存在する。
元横浜DeNAベイスターズの荒波翔が所属するSultanes de Monterrey(モンテレイ・サルタンズ) や久保康友が所属するBravos de León(レオン・ブラボーズ)、キューバの至宝フレデリック・セペダが所属したToros de Tijuana(ティフアナ・ブルズ)などのメキシカンリーグはMLBのAAA各の扱いだ。
その他メキシコの夏季リーグにはAA級やA級のリーグも存在しMLB同様のファームシステムが確立されている。これらのリーグの選手はメキシカンリーグの球団と契約を結んでいる。
また冬季には上記メキシカンリーグとは別に、よりレベルが高いメキシカンパシフィックリーグが開催され、日本のNPBから選手が派遣されたり夏にMLBや米マイナーリーグでプレーしていた選手も参加する。
さらにメキシコには、各地に地元企業や公共団体の支援を受けるプロアマ混成のリーグも存在するらしい。
アリスレイがどのようなリーグのチームと連絡を取っているのか定かではないが、少しでも良い条件で契約できることを願うばかりだ。
メキシコの野球事情については阿佐智氏の奥深いメキシコの野球システム:年を通じて複数のリーグが存在するメキシコ等を参考にさせていただきました。
日本の独立リーグにキューバの選手を
アリスレイに限らず、経済的な豊かさを求めて海外でのプレーを希望している選手は多くいる。
とはいえキューバ政府を通じて正式に海外のチームと契約できる選手はほんの一握りだ。代表チームの選手や将来を有望視されている一部の若手選手に限られると思われる。
その他の選手は亡命の道を選ぶしかない。しかしながら亡命したものの、どこのチームとも契約ができずにいる選手も少なくないようだ。金を目当てに亡命を唆す悪徳エージェントが暗躍するとの話もチラホラ…。
日本でプレーする道は?
日本プロ野球NPBのキューバの選手
現在NPBには正式にキューバの野球連盟から派遣されて(亡命ではない)日本のプロ野球でプレーしている選手がいる。
福岡ソフトバンクホークス
- アルフレッド・デスパイネ
- ジュリスベル・グラシアル
- リバン・モイネロ
- オスカー・コラス(育成)
中日ドラゴンズ
- ライデル・マルティネス
- アリエル・マルティネス(育成)
ここに名を連ねている選手は現キューバ代表か将来代表入りが確実視されている選手だ。代表経験がない20代後半の選手が直接NPB入りするのは極めて難しいと言えそうだ。
社会人野球とキューバの選手
かつては社会人野球シダックスにパチェコやキンデランなどキューバ代表の主力選手が在籍していたこともある。
しかし全盛期には200を超えるチームがあった実業団チームも現在は100チームに満たない。
こちらの道も険しいだろう。
日本の独立リーグ
日本には四国アイランドリーグplus、ベースボール・チャレンジ・リーグ(BCリーグ)、関西独立リーグの3つのプロ野球独立リーグが存在する。
このうち四国アイランドリーグplusとBCリーグはNPBには遠く及ばないものの選手に報酬が支払われている。
両リーグとも外国籍の選手もプレーしており、NPBとの契約を掴んだ選手も複数出ている。
キューバにはチャンスを貰えるのなら喜んで日本でプレーしたいと考えている選手が多数いる。単なる野球ファンにすぎない筆者にまで問い合わせが来た事もあるほどだ。
そんなキューバの選手の中にとんでもない金の卵、掘り出し物が隠れている、というのはキューバ贔屓が過ぎるだろうか(笑)。
先日、ソフトバンクホークスがMLBのドラフト上位候補だったカーター・スチュワート・Jr投手(米)を獲得した。契約金が6年推定700万ドル(約7億7000万円)といわれている。
キューバの金の卵を獲得するのにそのような大金は不要だ。
たとえ独立リーグであっても亡命せずに海外でプレーでき、NPBへの可能性も無くはないとなれば彼らに否やはないはずだ…。
通常の外国人選手の獲得よりハードルが高いかもしれないが、日本の独立リーグのチームの中にキューバ選手の獲得に動く球団は現れないだろうか…。